筋肉、運動神経に対し電気刺激により筋収縮を起こすことで、筋力増強や筋萎縮の予防、痙縮抑制などを目的に行われる治療法です。臨床現場では、脳血管疾患などで麻痺が生じてしまった方や高齢で筋肉の収縮が難しい方など自分の意志では運動するのが困難な患者さんの治療に用いられています。当院ではアイビスとトリオの2種類の機器を導入しており、患者さんの症状によって使い分けながら治療を実施しています。
実際のリハビリの現場では電気刺激療法に加え、運動療法や物品操作などの作業課題も併用しながらより効果的な治療を行っています。
人は手足を動かそうとするとき、脳から神経を通して筋肉に運動指令が伝わります。そして筋肉が収縮して運動を起こします。その際に筋肉にも微弱な活動電位が発生します。アイビスはその微弱な筋活動電位を読み取って、目標とする筋肉に電気信号を送り、運動をアシストすることで運動機能の改善を図る医療機器です。電気刺激と運動(課題)を併用しながら行うことでより効果的な治療を行うことが出来ます。
当院では、現在従来の電気刺激療法機器であるアイビス,トリオに加え近年注目されている高頻度反復末梢性磁気刺激療法を導入しています。高頻度反復末梢性磁気刺激療法は、磁気の力を用いて神経や筋肉を刺激させ筋収縮を促します。
当院に導入している磁気刺激装置Pastleaderは従来の磁気刺激装置の10分の1まで小型・軽量化した装置で、連続的かつ長時間の磁気刺激が可能です。コイル内で磁束を作り出して生体で「渦電流」を発生させて刺激することが特徴となります。これにより、有効な筋収縮を痛みなく得ることができ、従来の電気刺激療法のような電極は使用せず衣服の上から簡便に刺激することができる刺激装置です。
また、刺激が簡便で多部位の刺激が可能になったことで、関節運動を伴う積極的で効果的な反復運動も可能です。患者さんの受け入れが良く、動きにくい手足が動くことで運動意欲の向上にもつながります。
当リハ部では、「Pathleader(パスリーダー)PMSコイルUC-1」も導入しました。「PMSコイルUC-1」は従来の四肢用コイル「PMSコイルTC-1」よりも、より狭く小さい範囲を選択的に刺激することが可能で、顎の下にある飲み込みに重要な筋群への刺激ができます。それらの筋を苦痛なく効率的に筋収縮を促すことで飲み込みの力が強化され、飲み込みの状況が改善することが期待されます。
磁気・電気刺激チームは、当院で導入している電気刺激療法に関して、患者さんにより最適な治療を選択し治療効果を最大限に上げる事を目標に立ち上げたチームです。
主な活動内容は、1.電気・磁気刺激療法の患者さん個々に応じた最適な治療方法の検討、2.研究活動、3.研修会の参加や勉強会を通しての知識の更新です。
高頻度末梢神経磁気刺激療法は岡山県内でも導入されている医療機関が非常に少ない治療機器です。高頻度末梢神経磁気刺激療法のメリットとして従来の電気刺激と比較し疼痛が少なく、深部の筋肉まで刺激が可能であり、服の上からでも刺激可能で簡便に使用できるといった点があげられます。しかし、デメリットとして従来から使用されていた筋電図情報を用い電気刺激を行うIVESのような歩行や握りなどの複雑な運動と刺激のリンクが困難であり、刺激の強さが弱いことや磁場を発生させるため周囲には配慮が必要であることがデメリットとして挙げられます。
今後は電気刺激、末梢神経磁気刺激に関しての理解をより深め、患者さんに対してどちらの治療法が良いかを判断し、適切な選択を行う必要があります。また、最先端機器であり未だ研究報告も少なく、治療方法も発展途上であることから、今後もより適切な治療を提供できるようデータの蓄積を行い、研究活動や治療方法の確立を行っていきたいと考えています。