超高齢社会に突入した本邦では、医療・介護・福祉分野から呼吸器疾患に対する取り組みの重要性が高まっています。厚生労働省の報告には、死亡原因として上位に悪性新生物(肺癌含)や肺炎、誤嚥性肺炎が占めており、その必要性が理解できます。
また高齢者では、複数の疾患をもつmultimorbidity (多疾患罹患)という状態が恒常化しており、身体機能低下、死亡率上昇、QOL低下等への影響が懸念されています。Multimorbidityには呼吸器疾患も含まれており、高齢者のmultimorbidityにも配慮した呼吸リハビリテーションが必要となっています。
呼吸リハビリテーションに関するステートメントによると、呼吸リハビリテーションとは、「呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう障害にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である」と定義しています。また時相からは、病態に応じて急性期から生活期、終末期までを含む概念でもあります。
当部での呼吸リハビリテーションとしての取り組みは、評価に基づき運動療法、コンディショニングを中心とした介入、日常生活活動練習やセルフマネジメント教育、栄養管理、心理社会的背景を考慮し提供しています。これは医療者が一方的に行うものでなく、患者さん・利用者さん・家族とともに協働し疾患を管理し、可能限り自立して住み慣れた地域で過ごしていただけるよう支援していく包括的な介入として提供しています。
呼吸リハビリテーションの効果は、呼吸困難を中心とした症状の軽減、急性の呼吸器合併症の予防と改善、日常生活活動の自立と拡大、運動耐容能の増大、健康関連QOLの向上や生命予後などの短期・長期的改善効果が示されつつあります。
実際の呼吸リハビリテーションのプログラムは、コンディショニング(呼吸練習・リラクセーション・ストレッチ・排痰法など)、日常生活活動トレーニング、全身持久力(ウォーキングや自転車エルゴメーターなど)・筋力トレーニングから構成しています。そして自覚症状や病態などに合わせて、3つのプログラムの割合を調整しながら行います。
以上から当部の呼吸器リハビリテーションチームの目的は、呼吸リハビリテーションに関する知識技術の向上、学術活動を行い、当地域での医療と社会福祉の連携を適切に図ることです。以下に目的を提示します。
どうぞよろしくお願いします。