ドクタートーク・読んで効く処方箋

KARTE09 パーキンソン病の過去・現在・未来

神経内科・物忘れ外来 安田 雄医師

安田 雄医師 昭和52年 川崎医科大学卒
医学博士
日本内科学会中国地区評議員
日本神経学会認定専門医
日本薬物脳波学会評議員など


今年は我々「パーキンソン病」を専門としている者にとってはmemorial yearです。本症を初めて記載したのは英国の医師James Parkinsonで、1817年に"An Essay on the Shaking Palsy"というタイトルで6症例を呈示したことに始まります。丁度今年が200年目の記念すべき年です。細かく克明に臨床的観察を行っていて、現在知りうる主要な症状は網羅されていてることに驚きを禁じ得ません。彼の生家はロンドン郊外にあり、この家が以前は有名なジャズクラブ「ブルーノート」でした。私の趣味であるジャズと関連して何か親しみを覚えます。

またパーキンソン病患者脳の黒質及び線条体でのドーパミンの減少は現在ではあまりにも有名ですが、この事実は大阪大学精神科の佐野 勇先生が1960年に世界に先駆けて発表されました。佐野 勇先生の御子息に当たる佐野 輝先生(現鹿児島大学精神科教授)が私の発見した「良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん:benign adult familial myoclonic epilepsy(BAFME)」の遺伝子座を1999年に同定され、今年その遺伝子が東京大学神経内科辻省次教授により「Nature Genetics」に掲載されました。これはイントロンのTTTCA pentanucleotide repeatで、世界最初のメカニズムとの事です。私の発表から26年の時が経過しましたが、この事も私にとっては、2017年は忘れられない年になります。

パーキンソン病の治療は目覚ましく、新しい薬剤が毎年数種類出ていますし、外科的治療としての脳深部刺激法(deep brain stimulation:DBS)も積極的に行われ、治療の日進月歩には目を見張るものがあります。

iPS細胞を用いての治療が開始され、将来は神経細胞変性を抑制する根治療法(disease modifying therapy)である神経細胞保護薬などが開発される事が期待されています。

(広報誌SAY和 vol.53/2017春号より)

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