ドクタートーク・読んで効く処方箋

KARTE12 アトピー性皮膚炎の新しい治療と変わらぬ治療

皮膚科 澤田 文久医師

澤田 文久医師 日本皮膚科学会専門医

外科的治療を含め、皮膚疾患全般にわたり対応させていただきます。皮膚を通じた皆様の健康回復と維持のため、お力になりたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

川にたとえて

病気というのは川のようなものだと思います。川はいくつもの大小の川が合流します。いろんな方向から原因が流れてきてやがて大きな病気という名の汚れた川になるのです。当院ではできる限り上流にある汚染源をみつけてそれをきれいにすることを皆さんと一緒にやってゆきたいと考えています。

さて皮膚病の話ですが、アトピー性皮膚炎という名の大きな川があります。手ごわい川ですが、うれしい話題があります。そう遠くない未来、かつて夢のように思っていた治療薬がしかも複数登場するのです。

不本意ではありますがアトピー性皮膚炎を愛すべき故郷の川、高梁川に例えましょう。

大きな本流は乾燥肌です。皮膚表面が笊のようになったがために水分や脂といったいいものが抜けて、悪いものが簡単に皮膚に入ってくるから皮膚はその悪いものと戦わねばならないのです。これが皮膚炎・湿疹なのです。ならば治し方はわかりきっています。皮膚炎・湿疹にはステロイドを代表とする塗り薬、それとそもそも乾燥肌が原因なのですから保湿クリームを塗ればいいのです。簡単でしょ。でも実際は簡単ではないのです。高梁川が大きな川であるように、塗る範囲、面積が大きすぎて塗るのに疲れてしまうのです。

澤田 文久医師 それと高梁川に小田川があるように乾燥肌に負けないくらいの支流があるのです。それがアレルギー性炎症という川です。この川の氾濫を食い止める治療がこれまでなかったのです。これが保湿の難しさと相まってアトピー性皮膚炎を難治なものにしてきました。未来に登場するという薬たちはこの支流をきれいにするものたちなのです。小田川が氾濫しないように今日も多くの場所で工事が進んでいます。これと同じく治療ができたらアトピー性皮膚炎で苦しんでいる方が笑顔になるのではないかと思います。アレルギー性炎症を抑える治療法は今後確立してゆきますから、皮膚科診療の中でご案内したいとおもいます。

澤田 文久医師 未来にどんな治療方法が生まれるか期待が膨らむのですが、忘れてならないのはやはり本流への昔ながらの治療です。大変なことですが保湿をして皮膚を保護することと、時に生じるでしょう湿疹・皮膚炎に対し適切にステロイドを外用するということです。ここをせずして新しい治療が花開くことはないはずです。どうかご自愛ください。

今日は4月10日、桜が咲いています。本稿は初夏に皆様の目にとまるものと聞いています。いま世界を覆うウィルスだけではない脅威が治まっていますように、みんなが幸せであるように祈るばかりです。



(広報誌SAY和 vol.65/2020夏号より)

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