ドクタートーク・読んで効く処方箋

KARTE14 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザ感染症

呼吸器内科 矢野 達俊医師

矢野 達俊医師 感染対策委員会委員長・副院長



2021年11月現在、わが国ではCOVID-19は感染者数、死者数ともに減少し、落ち着いたように見えます。しかしヨーロッパ、韓国などでは再度流行してきており、今後日本でもいつ第6波が来るかわからない状況です。

さらに今年度は昨年度流行しなかったインフルエンザ感染についても懸念されており、もし両者が同時に流行することになれば、再び医療崩壊の危機に陥る可能性があります。

そこでCOVID-19とインフルエンザについて簡単に説明します。

矢野 達俊医師 (日本感染症学会HPより)

上記は2020.10月に日本感染症学会から出された提言の一部ですが、わかりやすく両者の比較がまとめられています。

ただし症状に関しては、その後COVID-19がデルタ株に変異してから、嗅覚、味覚障害は減り、その後出た有効なワクチンの効果もあり、死亡率も第5波では0.3%まで改善しています。

1)予防

インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)の有効率が40〜60%であるのに対して、COVID-19のワクチンは種類も色々ありますが、概ねインフルエンザに対して高い有効率を示しています。

現在本邦では75%以上の方がCOVID-19ワクチンを2回接種しておりますが、半年以上たつと抗体価の低下が懸念され、近々3回目接種が開始される予定です。

2)検査

今後COVID-19患者の発生がみられる地域では、流行期になれば、COVD-19とインフルエンザ両方の患者に遭遇する可能性があります。明らかに濃厚接触がある、(COVID-19に特徴的な)嗅覚、味覚障害があるなど、どちらか一方が疑わしい場合を除き、発熱のみなど両者の鑑別が困難な例に出会う可能性も十分にあると考えられます。現在検査としてはどちらの疾患に対しても抗原迅速診断キットが普及しており、まずはこの検査を行うことで、どちらかの感染か診断をつけることが可能となります。

もちろんどちらの検査でも陰性の場合も考えられますが、必要に応じて経過観察、COVID-19のPCR検査と進めていけばよいと思われます。

3)治療

川にたとえて

現在インフルエンザに対しては治療薬があり、発症早期(48時間以内)に内服すれば、高確率で治癒します。一方現在COVID-19には軽症例に使用する薬が存在せず、進行してから治療開始となります。現在早期から治療できる内服薬が開発されてきており、すでに外国では認可されている薬(モルヌピラビル:メルク社、イギリスで承認)、治験段階ではありますが有効性の高い薬(パクスロビド:ファイザー社、第2/3相試験にて重症化を89%防いだと報告)もあり、今後日本でも使用できるのではないかと期待されています。

*11月26日WHOは「新しい変異株」であるオミクロン株を、デルタ株などと並んで最も警戒度が高い「懸念される変異株」に指定しました。まだ詳細は不明ですが、今後流行する恐れがあり、警戒が必要です。



(広報誌SAY和 vol.71/2022冬号より)

↑ ページの上部へ